とある配信者の恋愛模様 第2話
登場人物
- 十夜(とおや)♂ 自称インターネット恋愛の達人(笑)
- 黒姫(くろひめ)♀ 十夜の事が好きだが、最近相手にされずにイライラ。
- 愛理(あいり) ♀ 明るくて元気いっぱいの女の子。
- 香(かおり)♀ クールな美人。
- こうへい ♂ 弾き語りが得意。十夜のリアルの友人。
以下本編
黒姫「今日の夜、電話したいんだけど。5分でいいから、時間取れないかな?」
十夜(いつもと同じ時間、同じ女から、違う内容のメッセージが届く)
十夜「今日の夜?いきなりどうしたの?」
黒姫「えっと、特に用はないんだけど十夜君の声聴きたくなっちゃって」
十夜(今まではこんな事一度も言い出したことなかったのに……誰かに入れ知恵でもされたか?ここは適当に言い訳して……)
黒姫「またお仕事?最近大変だね」
十夜「いろいろ忙しくてさ。姫との時間も取ってあげられなくてごめん」
黒姫「そんな謝らないで。こっちこそごめんね、私のマガワワばっかりで」
十夜「女のワガママ叶えてあげるのが男の役割だろ?」
黒姫「もう~」
十夜(本当に誰の入れ知恵かは知らないが、余計なことはしないで欲しい。最近やっと、俺が黒姫に対して冷めてきている空気を作り出して、尚且つそれを相手に遠回しに悟らせることが出来ていたっていうのに。まぁいい。所詮黒姫は、よりいい女を探すための足掛かり、ツールに過ぎないからな)
十夜「今日の夜時間ないかな?なんだか無性にアイリが欲しい」
愛理「なんだか表現がいやらしい」
十夜「おっとそれは失礼。俺にはそんな意図は微塵もなかったが、意識させてしまったなら素直に謝ろう」
愛理「そういう意地悪なこと言う人とは通話してあげませ~ん」
十夜「ごめんって!冗談さ!今日も寝る前にアイリの声が聴きたいんだよ」
愛理「調子がいいんだから。じゃあ、特別に許してあげます」
十夜(この子は愛理。俺のお気に入りその1。先週末に俺の配信に来た女の子で、なかなかノリがよくていい。下ネタ耐性が無いのか反応が面白い)
愛理「でね?香(かおり)ったら自分の配信には来いって言うのに、私の配信全然来てくれないんだよ!私は毎回コメントとかもしてるのに酷くない!?」
十夜「確かにそれは愛理がちょっとかわいそうだな。香にもそれとなく伝えておくよ」
愛理「え?香と繋がってるの?」
十夜(あ、やっべ)
十夜「ん?俺の配信に来た時に言っておくってことなんだけど」
愛理「なんだ、そっか。うん。安心した」
十夜「安心?」
愛理「そうだよ!安心しました。十夜みたいな変態に友達を汚されたくないもん」
十夜「おいおい酷い言い様だな。その変態と毎晩こうやって通話しているのはどこの誰だよ」
愛理「そ、それは私だけど……」
十夜(そう、俺は彼女とも毎晩通話している。大体22時から24時の日付が変わる前までの間で、約30分から1時間。明確な基準は意識して設けない。相手に悟られないようにランダム性を保つ。)
愛理「そろそろ日付変わっちゃうね。寝なくて平気?」
十夜「そうだな」
十夜(ここでのパターンは2つ。素直に寝るか、駄々をこねるかだ。だが、パターンは多いに越したことはない)
十夜「最近寝つきが悪いから愛理が一緒に寝てくれればよくなるかも」
愛理「はぁ?寝落ち通話したいってこと?」
十夜(まずった。寝落ち通話なんてしたら、次の女の子との通話にありつけないじゃないか)
十夜「でもほら、俺男の子だからさ?寝る前にエッチなことしなきゃ眠れないっていうか、何というか」
愛理「さ、最っっっ低!!!変態!もう通話切るからね!」
十夜「ま、待て愛理冗談だ!」
愛理「おやすみ!!!」
……
十夜(まあ、よしとしよう。何事も結果が全てなのだ。そう自分に言い聞かせていると、まるで今のやり取りを見ていたんじゃないかってタイミングでメッセが届く)
香「今日はいつもより遅いって事は、差し詰め愛理の相手かしら?」
十夜「おいおいエスパーかよ……」
十夜(というわけで、日付が変わってからはエスパー少女香との通話がはじまる)
香「で?どんな悪口を愛理から吹き込まれていたのかしら?」
十夜「待て待て、俺は【愛理と話していた】とは言ったが、【愛理が香の悪口を言ってた】なんて一言も言ってないぞ?」
香「でも言っていたでしょ?私の悪口。大方内容は、私の配信に来てくれない。私は香の配信にいってコメントもいっぱいするのに、とかかしら?」
十夜「これはエスパーの前にハッキングを疑うべきだな……」
香「そんな難しいことはできないわ。ただの盗撮よ」
十夜「盗撮!?俺盗撮されてるの!?」
香「あなたのiPhoneのカメラをハッキングさせてもらってるわ」
十夜「やっぱりハッキングじゃねえかよ!!でもカメラのハッキングじゃ、チャットのやり取りまで分からなくないか?」
香「iPhoneのカメラに映るあなたの瞳の反射から愛理とのやり取りを確認しているわ。愛理だけじゃなく、他の女とのやり取りも……ね?」
十夜「そこまでするなら普通にSNSをハッキングした方が早くないですかね……?」
十夜(とういか俺iPhoneじゃないし。他の女の子とのやり取りというワードを華麗にスルーした俺は、その後も愛理のご機嫌を取りつつ眠りにつくのであった)
十夜(次の日。俺は数少ないリアルの男友達と通話をしていた)
十夜「だからさ、名前ってすごい大事なプロセスだと思うの」
こうへい「ほう?詳しく聴かせろ」
十夜「リアルだったら、名字があって名前だろ?大人になるにつれ、異性間では基本名字呼びだ。そこから、関係が深まるとあだ名や愛称が使われて、さらに進むと名前呼びになると」
こうへい「それで?」
十夜「それがインターネットだと、基本自分でニックネームを付けるだろ?本名でやるやつは殆どいない。これが心理的距離を近づける一つの要因だと思うんだよな。初対面でも誰でも、現実でいう名前呼び。ほら、接客業とかで客を【お客様】じゃなくて名前で呼べって言われてるみたいにさ」
こうへい「つまり、アレか?ネットでイタイ名前を自分で付けてるやつには気をつけろと?無意識にそう呼ばれたがっているって?」
十夜「流石こうへい。俺の意図が伝わって何よりだ」
こうへい「ん~そうか……」
十夜「あれ?インターネット恋愛マスターの俺の理論にご不満?」
こうへい「だせぇ達人だな。いや、名前なんて結構みんな適当に決めてるだろ?中には本名でやってるやつもいるかもしれねえし……」
十夜「そんな奴ぜってーいねぇから!もしいたら、ただの情弱かネットリテラシーのない馬鹿だな。まぁ、こうへいがもしネットやることになったら俺がしっかりアドバイスしてやるからよ!安心していいぜ」
こう「ああ、頼りにしているよ」
3話へ続く↓